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《ネタバレ》 ベトナムの戦火から逃れ、フランスで育ったトラン・アン・ユン監督から見た"箱庭の中のベトナム"或いは"記憶の中のベトナム"を表現したかったのかもしれない。武満徹を彷彿とさせる不協和音に満ちた音楽と、全編を貫く、鳥のさえずり、虫や蛙の鳴き声、水の音といった環境音が、絶妙なハーモニーを生み、東洋の異国情緒を醸し出す。また適度な湿気を保った屋敷と緑豊かな庭園を艶めかしく捉えるカメラワークの美しさも作品の完成度を高める。幼い使用人が主人公ともなると、ハードな鬱展開になりがちだがそういう展開を意図的に排除し、平穏な日常の中に隠された不穏な空気がまとわりつく緊張感が一定の心拍数で描かれる、その神妙さに味わいがあり。この映画はリュ・サン・マンの存在なくして成り立たなかった。そのため、成人したムイに見合う女優がいなかったのはウィークポイント。戦争そして物質主義に激しく移り変わっていく現在において、嵐の前の静けさのようなハッピーエンドに不思議な余韻が残る。幸せの価値観は人それぞれだが、静かに自問自答するような感触。
【Cinecdocke】さん [DVD(字幕)] 7点(2018-01-28 22:17:49)
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