イーダ の Yuki2Invy さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > イ行
 > イーダ
 > Yuki2Invyさんのレビュー
イーダ の Yuki2Invy さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 イーダ
製作国ポーランド,デンマーク
上映時間80分
劇場公開日 2014-08-02
ジャンルドラマ,モノクロ映画,ロードムービー
レビュー情報
《ネタバレ》 BWV639『主よ、われ汝に呼ばわる』という曲は、タルコフスキーの『惑星ソラリス』で使用された曲でもありますが、今作でもラストにこの曲が使われることの意味というものは、かの作品と同一だと感じました。バッハの音楽の本質は「神の光」、即ち神が人にもたらす「救い」そのものであると考えています。取りも直さず、それはまた「原罪」の象徴でもあると考えます。基より罪を背負った人類に救いを与えられるのは、ただ神のみなのだ、という点で、それは同じことを意味しているのだと。

イーダの表情というのは、全編を通して「表向きは」特に変化しません。と言いつつも、その無表情の意味するものは物語と共にドラスティックに変化してゆきます。自分が何者であるかも知らない真に無垢な無の顔付きが、いつしか自らの運命を理解したことの絶望を湛えた冷たい無の表情に変わります。彼女には、自分の親を殺した男に対して怒りを抱くことすら許されていません(何故なら彼女だけが助かった理由もまた、その男の人間性の内にあるからです)。これはあまりに残酷な運命だとは思いませんか。それから、愛を交わした後に先の事を話し出す男に投げかけた表情、そして自らの人生を決した最後の表情、これらもまた、それまでと変わらずに「無」ではあります。が、そこには彼女の心の移り変わりが実に見事に描き出されていました。この部分の演技・演出というものは、率直に極めて高度なクオリティの仕事だったと思っています。

本質はごくシンプルなテーマを擁する作品で、尺も非常にコンパクトでありますが、これほどまでに意味の深い「旅」というものを描いたロード・ムービーというのは他にあるのでしょうか(フェリーニの『道』も思い起こされますが、あれよりも更にエッセンシャルだ、とでも言いますか)。モノクロで絵画的(静物画的)な映像のエレガントさも含めて、眩いばかりに透きとおった風情を全体に纏いながらも、この上無く濃密である、という映画です。傑作かと。
Yuki2Invyさん [DVD(字幕)] 9点(2021-03-18 02:10:30)
Yuki2Invy さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-04-14aftersun/アフターサン6レビュー6.00点
トロイ(2004)6レビュー5.86点
2024-04-09ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀5レビュー6.67点
2024-04-06オーメン:ザ・ファースト6レビュー6.50点
2024-04-04オーメン/最後の闘争3レビュー3.71点
2024-04-03オーメン2/ダミアン5レビュー5.18点
2024-04-02オーメン(1976)8レビュー7.02点
2024-04-02愛の新世界7レビュー6.61点
2024-03-29オッペンハイマー7レビュー6.40点
2024-03-26SISU/シス 不死身の男6レビュー7.33点
イーダのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS