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レビュー情報
《ネタバレ》 おやじ狩り的な暴漢に襲われて、記憶を失ったおじさんが、貧困コミュニティの中で生活し、おばさんに恋をするといったお話。時代設定は、金属製のオシャレな便器や、医療器具などを見るに現代なんでしょうけど、少し黄ばんで粒子の荒い、でも空だけはやたら綺麗な映像が、どこか郷愁を誘います。冒頭で理不尽な暴力がある以外は、底辺社会での男の生活を追う静かな作品。どこか小津作品を感じさせます。ご都合主義のジェットコースター的な展開からは最も遠い位置にあると言えます。それだけに、序盤の非現実的なコメディー描写が必要だったかどうか疑問です。この作品に描かれる貧困が、フィンランドの現実社会をどの程度反映しているのか、こちらに知識がないために判断できず、途上国の作品で描かれる貧困ほど、有無を言わせぬ強烈な切実感がなく、そういったところで、どうしても印象が薄くなってしまうんですよね。人間を疎外する硬直的な社会システムがテーマの一つと考えられますが、記憶がないというのは特殊ケース過ぎて・・・本来手厚い福祉社会システムの中で、どういう人間が網からこぼれて貧困に陥るのかの方に興味が行ってしまいます。ドキュメンタリーじゃないので、それを求めるのは違うかもしれませんが。
【camuson】さん [DVD(字幕)] 5点(2023-09-05 19:54:21)
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