2.《ネタバレ》 まずファースト・シーンが印象的だ。
街の景観を斜め上から捉え、一見澄み切った街から徐々に質素な街の一角へと画面が映る。
街の外から流れる美しい川をたどり、やがて川の上にある小さな貧民街でボロを来て生活する子供たちの集団に出くわす。
貧しさの余り心が荒もうとする子供たち。
川の美しさに目を付けた富裕層の家を、憧れと恨めしさの混じった眼差しで見つける。
坊ちゃんと貧民街の子供たちの睨み合いが印象的だ。貧しさが憎しみに変わる一歩手前。
そんな彼らの成れの果てが、しばらくしてスッーと登場するギャングたちなのだろうか。
貧困から抜け出すために犯罪の世界に足を踏み入れてしまったマーティン。
ストーリーは終始ドラマだけで終わるかと思いきや、終盤の銃撃戦には度肝を抜かれる。
誘拐を決意したマーティン、それを止めようとマーティンの目の前に迫るデイヴ。
豪邸から流れる曲が変わる、冷酷な殺し屋となりマーティンを川に落とす、急死に一生を得て川から這い上がるデイヴ、薄暗い路地裏での緊張、反撃と揉み合い、咄嗟に逃げ込んだ薄明かりが照らす廃屋での銃撃、屋根伝いの追走劇、上を目指し梯子を登るマーティン、地の底に堕ちるマーティン、蜂の巣のように滅多撃ちにされるマーティン、母親の悲痛な叫び、やるせない表情でかつての親友を見下ろすデイヴ・・・。
グレッグ・トーランドの神がかったキャメラの素晴らしき事。
去り際に絶えず母親の窓を見つめ続けるデイヴの表情。正義感を気取っていた彼も、浮気をし、気付けば親友を死に追いやっていた。そんな今の自分への絶望の混じった表情だ。
相手が悪い事をしても「いや、俺がもっとしっかりしていれば」と真っ先に自分の非を考えてしまう・・・そんな男なんだ。そいう奴だから、ドリーナはデイヴに惹かれたと思うのよ。
それに対局を成すようなマーティンを演じたボガートの演技もまた良い。すべてに絶望して「所詮俺の人生なんてこんなものよ」と哀しい表情が胸に迫る。
ギャングの英雄としてではなく、実に呆気なく虚しい死に様だ。顔の変わった彼の死体を見て、かつて彼が貧民街出身の子供だった事など誰も知る由がない。事情を知る母親だけが彼のために声を挙げ涙を流す。