薄汚れた路地裏の泥濘に足をとられ、よろけながら、うらぶれて .. >(続きを読む)[良:2票]
薄汚れた路地裏の泥濘に足をとられ、よろけながら、うらぶれて、散髪から帰ってくる主人公の男。と、突然、その脇を通過してゆく整然たる出征兵士の行進とそれを見送る群衆と日の丸。この場面はこの映画を最もよく象徴しているように思えた。 社会情勢などには全く無関係に、ひたすら女との飽くことのない非生産的かつ無意味な性行為に埋没してゆく遊び人の主人公は、その時代にとってネガティブなものの代表であり、反対に、軍隊はその時代において、正しいもの、美しいもの、雄雄しいもの、つまりポジティブなものの象徴である。 主人公は反社会的というより、あくまで非社会的存在であり、だが、この映画の監督大島渚は、そういう人間をこそ語るに足る人物だとして扱っている。 カットやボカシの無い完全版を見てみたいものだ。[良:2票]