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<ネタバレ>思えば、ヴァン・ダムくらい一人二役にこだわるスターも珍しい。『ダブル・インパクト』にはじまって、『マキシマム・リスク』や『レプリカント』まで、双子だのクローン人間だのを嬉々として(?)演じている。『タイムコップ』でも、過去の自分を未来から来たヴァン・ダムが見つめるという場面があったはずだ。そして本作もまた、「ヴァン・ダムがヴァン・ダム自身を演じる」という意味で、やはり一人二役をめぐる彼の“オブセッション”的主題を反復しているんである。
落ち目の人気スター「ヴァン・ダム」が郵便局強盗にまきこまれ、包囲する警官隊から犯人と間違われるという喜劇的設定ながら、全編を覆うシリアスな、重苦しい空気感。そのなかで、これまで演じてきたヒーローのようにはいかず成すすべもないヴァン・ダムの、疲れきった表情がまず素晴らしい。そして皆さんもご指摘の、あの独白・・・
ヴァン・ダムが突然カメラに向かって「これは俺の映画だ」と語りはじめ、これまでの人生やドラッグに溺れた事実などを告白し、最後に「そう、これは俺の現実だ」と告げて、ふたたびドラマへと戻る、ワンカットで撮られた長いモノローグ場面。そこにあるのは、単なるメタフィクションとしての面白さを超えて、映画(=虚構)と現実が交差することのスリリングさだ。そう、この映画はまさしくヴァン・ダム版『サンセット大通り』(!)とでもいうべき、現実のヴァン・ダムと虚構(=イメージ)としての「ヴァン・ダム」という“一人二役”を自ら演じてみせた作品として、その〈二重性〉に賭けられたものに他ならない。
ただ、これでもう少しヴァン・ダム=「ヴァン・ダム」の悲喜劇性を際立たせることができたなら、この映画はかなりの傑作になっていたにちがいない。と思わせる、映画としての“弱さ”は確かに認めよう。けれど何度もいうけれど、本作のヴァン・ダムは本当に良い。素晴らしい! これを契機にひと皮むけたヴァン・ダムの、今後に期待をもたせてくれただけでも、ファンとしては大いに感謝しようじゃないか。[良:1票]