<ネタバレ> どうもエロな描写を売りにしているようだが、実は非常にストイ .. >(続きを読む)
<ネタバレ> どうもエロな描写を売りにしているようだが、実は非常にストイックで丹精な演出に貫かれた秀作だと思う。そして、本作に登場する唯一の情交シーンは、抑制の利いた語り口の中では異質なほど丹念に描かれていて一瞬違和感を覚えるが、観終わったあとに実はこの物語の核になっていることが分かり、かえって深い余韻を残す。
こんな映画をどこかで見たことがあるなと、ふと『完全なる飼育 愛の40日』を思い出した。男は過剰で不器用な行動を通してあるひとりの女を愛し(まるでそこに己の全存在を賭けているかのようだ)、やっと愛を勝ち得たかに見えたその瞬間、唐突にやってくる残酷なる運命。彼らはむしろ既に予感=諦念していたかのように(そうだ。確かにこの二作の彼らはそれを口にしていたはずだ)進んでその運命の渦中へと自らを投じる。どちらも愛される女性(運命の女!)の視点から描かれているのもよく似ている。さらに、一般の観客には不親切なほど肝心なことがあまりにも素っ気なく、ぶっきらぼうに描かれているのは、この二作の監督の資質が元々似ているからなのだろうか?
しかし、ひとたび観てしまうと、いつまでも癒えない鈍い痛みのような感動が心の奥底に沈殿してしまう。私はこれらを『アフター・ダーク』などに連なる“孤独な魂のフィルムノワール”とでも呼びたい。