アクション映画ではない。基本はアメリカの社会問題のひとつであ .. >(続きを読む)
アクション映画ではない。基本はアメリカの社会問題のひとつである麻薬問題で、それに絡む人々の、それぞれの立場での悪戦苦闘であり、まったく違った事件が同時進行して物語を形成していくわけだが、どうしても相互に作用しているとは思えない。それぞれの物語としては面白いのだが、いかにも詰め込み過ぎで、2時間半で全てを消化するのは辛過ぎる。アメリカとメキシコの舞台転換の為だろうが、ブルー・トーンとセピア・トーンの多用も頻繁だと癇に障る。マイケル・ダグラスは、さすがベテランの味を堪能させてくれた。家庭の事は妻の責任と逃げていた男が次第に父の顔のなり、娘の行方を追うシーンでは鬼気迫っている。逆に、思わず「マラドーナさんですか?」と思ってしまったデル・トロは、殺し屋を捕まえろと言われて、「慣れない土地で追撃戦か」思えば、次のシーンには連行してるし、密告者と化して、「さあ、身の危険が」と思えば次にはもう逮捕してるし、「何だったんだ、いったい」という肩透かしの感が免れない。そもそも、メキシコのシーンがどうしても必要だったとも思えない。「家族を敵として戦うには残酷過ぎる」というダグラスの科白が集約なのだとすれば、無理に2時間半使うより、2時間枠で、麻薬と戦う家族の葛藤を描いた方が、まだ作品に厚みが出たような気がする。