本作の骨格になっているのは、三男サミュエルが従軍中、手紙の中 .. >(続きを読む)[良:2票]
本作の骨格になっているのは、三男サミュエルが従軍中、手紙の中で語った「父が正しかったんじゃない。僕が子供だったんだ」という科白。作品の核は、第一次大戦と禁酒法時代のアメリカ西部で翻弄される家族の物語だが、背景を思えば、作品終盤で、長男アルフレッドが次男トリスタンに「おまえが甘かったんだよ」と言う科白の裏には「そして俺も、甘かった」という声が聞こえてくるようだ。この三人の兄弟が従軍した泥沼の塹壕戦には、世界的に有名な人物も参戦している。後に禁酒法が生んだ世紀の犯罪王として名を馳せたアルフォンソ・カポネ=アル・カポネで、片田舎で酒の密売をしていたトリスタンは知らなくても、政治家になったアルフレッドは当然、知っていただろう。長男の意地と良心と知恵を政界に持ちこむと大見得を切った手前、言葉にはしなくても、心の中ではやはり「父が正しかったんじゃない。俺が子供だったんだ」と、やはり思ったはずである。この時、トリスタンと対立する形になったのがオバニオン兄弟だが、当時、「シェーク・ハンド・マーダー」という殺しのテクニックでアル・カポネが葬った対立ギャングの名が、オバニオンである。第一次大戦の名残はトリスタンの中にも表現されている。今で言えば心的外傷後ストレス傷害だが、当時はセル・ショックと呼ばれた戦争後遺症は、戦争帰還兵の深刻な社会問題でもあったようだ。アメリカ人には、かなり含蓄のある作品なんだろうと思うが、個人的には、ヒロインのスザンナがラドロー家の食卓に初めて姿を見せた時の髪型が、オーストリア皇后エリザベート=シシィの髪型に酷似していたせいで、何故か、トリスタンの生き様がシシィ皇后に重なってしまって困った。スザンナの方が、こういう生き方が出来ていれば、八方上手く収まったんだろうが、子供を望んだ時点で、スザンナという役は安定を求める女性になってしまっている。そして、安定した生活の中で自由をも望むには、女性にはまだ、厳しい時代だった。ブラッド・ピットについては、何を言う必要もない。当時のピットが、役者として、全精力を注ぎ込んだ役である。特筆は、サミュエルのトーマス・ヘンリーが、絶品の演技をしている。[良:2票]