価値観の多様化、というより細分化が加速化して進む現代。言って .. >(続きを読む)
価値観の多様化、というより細分化が加速化して進む現代。言ってみれば人々の「オタク化」が広まっている時代だと思う(因みにここで言う「オタク」とは、別にマンガやアニメやゲームのそれのみを指すのではなく、個人がそれぞれの趣味嗜好に邁進している、という意味です)。随分前から紅白が視聴率を取れないとか言っているけれど、「それぞれの人が自分の聴きたい音楽(だけ)を聴く」という今の時代にあっては、それも必然。それが良い事か悪い事か、これから時代がどう動いていくのか今の所予想もつかないけど、これからどんどん「自分は自分、他人は他人、隣は何をする人ぞ」という風潮はどんどん広まり、人々は自閉化・自己完結化の方向に進むのだろうなーと思う。んで、この作品。自称「漫画芸術家」の青年とコスプレ大好きOLという設定は、正にそうした時代の象徴のように思える。まるで異なる価値観を持った男女がおずおずと近づき合い、自分と相手のの価値観とどう折り合いをつけていくか、というのは非常に興味深く思えた・・・てか、何かいつの間にか文章硬くなってるな、俺。ま、そんな↑メンド臭い事は置いといても、松尾スズキのユニークな台詞回し(いかにもギャグっぽいのだけでなく、さりげない台詞、例えば恋乃が亡くなったお祖母ちゃんの事をいう台詞とかも楽しい)、それに「歩く異化効果」とでも呼びたくなるような松田龍平の存在感、酒井若菜の「いっちゃった」演技(と、胸の谷間)、無駄に豪華なキャストなど、見所満載。ラストの二人の疾走シーン(余談だけど、門のあのコスプレは、きっと「キン肉マン」のイワオなんだろうな)は馬鹿馬鹿しくも清清しく、感動的。現代的なテーマを題材にしつつ、しっかりエンタテインメントとしても成立させた松尾スズキは、やっぱり凄い。あ、でも唯一の不満は、せっかくキヨシローが出てるのに「気持ちE」の台詞を言わせなかった事。あとは満足。やっぱ「自分」てのは一度は捨てなくちゃいけなくて、でもホントに捨ててはいかんものなんだ、と思いました。