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<ネタバレ>まず最初にエドワードがボトルシップを作っているシーンから始まるんですけど、これがもうすでに暗示的なんですよね。要するにエドワードの人生というのはボトルシップの船みたいなもんだって。一度入ったら二度と出られない、猜疑と疑心暗鬼の世界。のちに父親となった彼が成人となった息子にボトルシップの作り方を教えるわけだけど、その後、今度はCIAの一員となった息子の方も不遇の運命に囲まれていく。「誰も信じるな」これが諜報員の鉄則だという。人間というのは社会的な生き物。社会の営みには、信頼というものが必要不可欠です。互いに信頼しあって生きている、それが一般の人の人生なわけでしょう。そういう観点からすると、諜報員の人生とはいわば「人生を否定する人生」だといえる。当然家庭も友人関係もガタガタになる。信頼によって形成されている社会を守る諜報員は、徹底して不信でなければならないというアイロニーがそこにはある。巨視的にはキューバ危機、ピッグス湾事件、ケネディ暗殺が、微視的には通告者、親友、家族と愛人が全て邪推の網でつながっていく。何も信じられないということの辛さ。この孤独さを淡々と描く本作はとても良質な大人のドラマだと言えます。不満な点は、時間軸が前後する構成になってるんですけど、学生時代から立派な息子の父親になるまでのエドワードの顔がほとんど変わっていない(変わったのは眼鏡レンズの厚さぐらい)のと、テープが録音された場所に行って真実を知る展開でちょっとご都合主義を感じた点。ドンパチもなく、サスペンスフルなわけでもないですが、裏に生きる人たちの壮絶な裏側を描く物語。裏を読むのが好きな人にはお薦めです。