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<ネタバレ>フランクが最初に書き出す建築のデッサンがもうすでにアートですよね。ちょっと1枚もらって部屋に飾りたいぐらい。彼の建築作品はぱっと見た感じ、ピカソのキュビズムやらデュシャンの階段を降りる裸体などといった近代絵画を思わせるようなフォルムなんだけど、フランクは古典の絵画を持ち出して、そこからコンストラクションを抽出する。「私は絵の構成を、建築の構成として見る」のだと。人間が本来持っている美的感覚、バランス感覚を見いだし、それを利用する。こういうところに、他の建築家とは違う、彼の独創性の源泉があるように思います。劇中にも、「感情の三次元化」という言葉が出てきましたけど、彼の作品は一見すると奇抜ですが、よく見るとちゃんとバランスがとれてる。直線しか無い現代建築や、あるいは曲線しかないガウディみたいな建築のように対極ではなく、直線と曲線が半々としてある。野心的な美術館に野心的なスペースを作りながらも、今までのような美術館らしいスペースも作る。審美性も機能性も両立させようとする、プロフェッショナルな姿勢というものがよく現れてる。それはいわば、エモーションとロジックの掛け合わせであり、彼は教科書のやり方を逸脱しながら、なおかつ新しいルールを自分で作り、美しいフォルムを生み出す。これぞまさに真の芸術家そのものだといえるでしょう。新しいものには常に批判がつきまとうが、それを行うリスクを恐れない精神、誰にも負けたくない、競争心が強いんだと吐露し、出来上がった自分の作品を見て、恥ずかしいと思ってしまう。一人の人間としてのフランク・ゲーリーも興味深い。いろいろと示唆に富んだ作品でしたが、一番印象に残ったのは、監督シドニー・ポラックがぽろっと言っていた「才能とは病である」という言葉、その考え方でしょうか。