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遊女の世界を描いた作品としては、よくありがちなストーリーで、とりたてて目新しさは感じられない。黒澤明の遺稿で初のラブ・ストーリーというだけで、果たしてなぜ今映画化したのか、大いに疑問の残る作品だと言える。江戸時代の深川に展開される人間ドラマに、どれほどの深い意味を持たせられたのだろうか。往年の活力を失った熊井啓の演出は上滑りをするばかりだ。クライマックスの豪雨のシーンはいかにも黒澤らしく豪快だが、そこで展開される作劇とのズレを感じるのは私だけだろうか。それにしても惚れっぽい娼婦役の遠野凪子は、大半のシーンが泣き顔ばかりで、ほとんど演技らしい演技をしていないのには困ったもので、さっぱり印象に残らない。むしろ少しも娼婦に見えない清水美砂の、相変わらずぶっ飛んだ存在が痛快で、このつまらない作品を救っている。