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まだ記憶に新しい「金大中拉致事件」に大胆な仮説を立てて真相に迫ろうとする、阪本順治監督初の社会派ドラマ。ザラついた画像の一種ドキュメンタリー・タッチで描かれた本作は、共に国家を思うが為の男たちの行動と友情を、骨太で迫真性をもって展開されていく。あくまでもフィクションでありながら、できうる限り事実に沿った描き方で真相に迫ろうとする作り手の意欲は充分に伝わってくる。佐藤浩市扮する自衛官が誘拐に協力する経緯が、やや安易で説明不足の感もあるが、やがて組織を棄て女にはしるというアウトロー的な役柄は、彼の持ち味を存分に生かせていると思う。真実を隠すため個人を闇に葬り去ってしまおうとする、国家というものの不気味さを漂わせるラストが強烈だ。