瀬戸朝香扮する麻美は気が強くて身勝手で、いくら仕事のためとは .. >(続きを読む)
瀬戸朝香扮する麻美は気が強くて身勝手で、いくら仕事のためとは言え、周囲の意見にまったく聞く耳を持たない女流棋士。不調続きでランク落ちの危機に瀕し、優しく気遣う夫との関係もギクシャク状態。妙に優しくされる事がかえって彼女のイライラを募らせ、何かにつけ八つ当たりして、ほとんど意地を張っているとしか思えない気分を、瀬戸が巧みに演じる。それにしても彼女の妹ともども、自分の都合だけで生きているような女たちに対して、夫や恋人(元彼も含めて)といった、ここに登場する男たちのなんと優しいことか。夫の本当の優しさに気づき、やがて自我に目覚める主人公という定石通りに話は進むが、ひとつ間違えると嫌味で不愉快な作品になるところを、大谷健太郎監督の明るくテンポの良い演出と、出演者それぞれの好演で補っている。