<ネタバレ>エンドロールで誰も席を立たなかった。館内の照明が灯っても誰も .. >(続きを読む)
<ネタバレ>エンドロールで誰も席を立たなかった。館内の照明が灯っても誰も立ちあがろうとしなかった。余韻に浸っていたのではなく、あきらかに固まっていた。私も例にもれず固まっていたのですが、みんながみんな固まっている光景が妙に嬉しかった。ストーリーが難解なのではなく、受け取り方が難解なんです。この映画をどう捉えどう消化すればよいのかというところで困惑するのだと思う。そしてその困惑自体がじわじわと快感に変わる。内容は、役者志望のコンビニ店員<北野たけし>が超売れっ子映画スター<ビートたけし>に出会うことで妄想の中で映画という虚構の世界に足を踏み入れてゆく、、という<ビートたけし>の夢。だから<ビート>の前で寺島をかっこいいと言った京野は寺島の女に、タクシーの運転手は気楽でいいと言った大杉はタクシーの運転手に、<ビート>にとってしつこい岸本は恐ろしいほどのしつこさでどこにでも登場する。監督であり俳優であり作家でありコメディアンであり、そして一人の人間である北野武の多面性が投影された映画ととるも良し、そこに北野の葛藤を読み取るも良し、北野映画の集大成的な見方も良し。しかしそんなことよりも、ピンクのタクシーが死体の中を進んでゆく様のフェリーニっぽい画や、『ソナチネ』や『HANA-BI』の海と壮大な音楽をバックに赤いポルシェとたけしの後姿の奥に映される新体操をする京野の滑稽で美しい画や、和室に赤や青というけしてゴダールにはならない不思議な色使いを堪能できれば、それだけでこの映画はじゅうぶん楽しめる映画であることも確かなのです。体感映画とは、よく言ったもんである。