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<ネタバレ>前半は男と男の出会いとイチャイチャが言葉少なに描かれてゆく。男女ではなく男同士であること以外はべつに変わったところはなく、ちょっとした笑いも交えてなんとも清清しい恋愛の一端を見せられているような、そんな前半であった。ところが二人がデートを終え、一人が夜の闇に消えてゆく瞬間から強烈な緊張感が出現する。人が虎になるという民間伝承が語られ、そこからはいつ虎と化した若者が出てくるのかというサスペンスが常につきまとうことになる。しかしこの映画の凄いところはそこではなく、度々映し出される闇と、その闇の中に浮かび上がる虎の映像にある。このシーンの凄さをどう伝えればいいのかわからない。息をすることすら忘れて凝視した。全く異なった時間の流れを感じさせるのは、前半の日常の丁寧な描写が活きているのだろう。この闇と虎はなにかの比喩なのかもしれない。男を好きになってしまった男の深遠に潜む虎、とか。日常の狭間で悩み、自らの虎を抑えきれなくなった若者は虎を開放してしまう。それを恋人は受け入れる。そんな物語かなと思ったんだけど、実はそんな解釈もどうでもよくって、この映画の最大の魅力は、この映画を見て感じた戸惑いそのものにあるような気がする。なぜ戸惑うのか。それはこの映画が私の許容範囲を超えたものを見せてくれたからに他ならない。