ある男が斧を買う。女が通りを歩くのをじっと覗き見る。斧を持っ .. >(続きを読む)[良:1票]
ある男が斧を買う。女が通りを歩くのをじっと覗き見る。斧を持った男が寂れた、それでいて頑丈に閉ざされた小屋に入る。その中の焼却炉から人の手首。この男は殺人鬼。という完璧なミスリードから映画は入ってゆく。つまりこの無口な男、殺人鬼でもなんでもないのだが、このミスリードは後に明らかにされる過去の冤罪事件を含め、常に損な役回りをする主人公を象徴したシーンともなっているのだろう。サスペンスに満ちた魅力的なオープニングのネタばらしがされてもサスペンスは持続する。美しい町並みも絵に描いたような空と雲も、そして静寂すらも不穏な空気を作り出すためのもののように感じる。静寂といえば、この男が行うある行為は静寂を必要とするのだが、それゆえに「物音」が強調されてここでも極上なサスペンスを発生させているのだが、この「物音」の使い方、響かせ方がまたうまい。この「音」は出来ることなら映画館で体験してほしいところ。そんな緊張の中にユーモアと切なさを同時にもたらす雪上のしりもちは見事と言うほかない。あのしりもちは芸術だと思う。そしてそしてこの結末よ!あぁ、あぁ、言葉にならない。愕然とはこういうことなのか。[良:1票]