アンドレイ・タルコフスキーから直接教えてもらったという「水」 .. >(続きを読む)
アンドレイ・タルコフスキーから直接教えてもらったという「水」の描写(水車のある村)がとりわけ美しい。他にも(桃畑)のまさに桃の花が満開となる画や(鴉)のゴッホの絵画の中なんかは失われた世界としての幻想的な美が強調されていて素晴らしい。黒澤明の全ての作品に言えるのは、その世界をスクリーンに再現するための様々な天才的な工夫と、忍耐を惜しまないその姿勢が群を抜いているということ。(そのぶん思いもよらない奇跡的な画が撮れるということも無いだろうと思われるのだが。)しかし「映像で語る」ことに関しては並み以上の才能はあっても天才と崇められるほどの資質は持っていないのではと思ってしまう。もちろん私が気づかないだけかもしれないが、この作品の登場人物の輝きの無さや、説明過多な部分を見る限りそう思わずにはいられない。結局黒澤作品の面白さって脚本の面白さと画作りの妥協の無さにつきると思うのです。この作品はその「画」だけが美しい作品でしかないように思う。とは言うものの、映画への情熱が無ければこんな美しい画は撮れないとも思います。