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<ネタバレ>「夫婦三部作」(『めし』『夫婦』『妻』)の中で夫婦の溝が最も浅い。どの夫婦にもあるだろう表には出ない些細な不満。そんなどこにでもあるような話に魅入らせてしまう成瀬はやっぱり凄い。なにげない会話が画面に映されたときの人の動き、目の動きが、なんでもないシーンをとんでもないシーンにしてみせる。女だから、妻だから、当たり前のようにこなさなければならないこと、我慢しなければいけないことがある。男にだってある。それをちゃんと見ていてくれる人がいなければストレスになるのは同じ。当たり前のことを当たり前にこなす毎日の疲れ、その疲れを癒してくれる言葉もなし、そのうえ自由気ままな姪っ子に対する嫉妬、、、。居心地の良い東京へ逃げ帰る。ここで登場する杉村春子と杉葉子がまたいい。何もかも解かっている母に甘える。夫の仕事を手伝いながら活き活きと主婦をこなす妹を見る。またまた登場の姪っ子に、同じように現状から逃げているだけの自分を見る。そこに夫が迎えにくる。「迎えに来る」という行動をして言葉以上のものを伝える夫。最後のナレーションはたしかにこの時代特有の価値観なのかもしれないが、夫婦の物語は普遍に満ちていると思うし、なによりも画面は今観ても新鮮で上質なのである。