私がこの作品で一番好きなのは、主人公2人の愚直なまでの誠実さ .. >(続きを読む)[良:4票]
私がこの作品で一番好きなのは、主人公2人の愚直なまでの誠実さ、まっすぐさなのです。変に屈折した、もしくは中途半端に悟ったような登場人物ばかりを見ていると、本作の2人の一途さは、まるで大西洋を包む夕陽のように眩しいのです。売れすぎたせいでお子様ランチ扱いされる作品ですけど、この作品は本来中年向けですよ。それと、沈んでいくタイタニックは、それまで栄華を誇った貴族制度の崩壊を示しているのですね。そう思って見てみると、それを示すポイントがいくつも出てきます。映像については、単に金をかけただけでなく、前半の青空や夕陽と後半の漆黒の闇の対比、最初の船体の光景と最後の「何もなくなった」光景の対比、「徐々に」水位が上がってくる描写など、きちんとそれぞれに意味があるのがよい。あと、あまり注目されませんが、脚本もかなり注意が払われていますね。設定が「老ローズの回想」なのですから、ローズが知る余地のない描写はあってはならないのですが、この映画では、ローズが現実に体験したこと、またはそこから合理的に推測・想像できる範囲のことで、すべてのシーンをカバーしています。そして最後に、観衆の誘導役として絶妙なポイントで登場し、回想に重みを加えることに貢献しているビル・パクストンの功績は忘れてはならないと思う。すべての要素がきちんと機能して、壮大な内容を作品内に一杯に収めきった傑作。[良:4票]