物語の枠組としては、(北アイルランド紛争という特殊背景はある .. >(続きを読む)
物語の枠組としては、(北アイルランド紛争という特殊背景はあるとはいえ)少年の日常生活のあれこれという範疇内であって、それほどの広がりはない。しかし、とにかくモノクロの映像の陰影や濃淡が美しく、それに浸っていられるだけでも価値がある。また、お母さんの凜とした存在感も筋を通しているし(そういう作品でないのは分かっているが、微妙な色気もある)、作中の主人公同様、爺ちゃん婆ちゃんにもかなり助けられている。ケネス・ブラナーがこんなかっちりまとまった小品を作ったのには少々驚いたが、普段大作小説を書いている人が、ちょっとエッセイも書いてみました、という趣だろうか。