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<ネタバレ>クレールが前作「最後の億万長者」の興行的失敗の後、稀代の映画製作者アレクサンダー・コルダに招かれ英で撮ったファンタジック・コメディの草分けとも言うべき名作。タイトルはまるで外国での活動を余儀なくされた自らをも皮肉っているかのようでもあり、実に意味深長だ。DVD解説によればコルダはチャールズ・ロートン主演で企画していたそうだが、別の映画へ出演が決まったので流れたとか。マジ?悪いがロートンじゃこの洒脱なストーリーに全然合わないし、女たらしのマードック役がてんでサマにならなかっただろう。矢張り貴公子然としたロバート・ドーナットで正解だと思う。さて、いくら英で製作され米俳優が大挙出演しようと、滲み出るクレールのエスプリと愛すべきキャラクター造形は本作でも健在である。予め断っておくが、本作は(ドリフのコントみたいな)ドタバタスラップスティックの大爆笑お馬鹿映画などではない。そういうのがお好きな向きには全くオススメできないので、クレールのユーモアに共感と理解をお持ちの「大人」の方にこそ御覧いただきたい。思わず「ニヤリ」とする品の有るユーモア、「クスッ」とさせられるウィットに満ちたプロット及び台詞回しが堪能できるハズ。個人的には冒頭でマードックが自軍の砲撃で間抜けな戦死をしてしまう場面、前半の借金取りたちが城を見回るドナルドとペギーの後をゾロゾロついていく(徐々に人数が増えていく!)場面や、同じく借金取りたちが晩餐会で給仕役を憮然としてこなす場面が特に可笑しかった。後半の米英双方が発表する声明文の応酬も皮肉さがピリッと効いて最高!フロリダの椰子の木とグロウリィ城とのミスマッチ感もたまらなく微笑ましい。こういう偉大なルーツあればこそ「ゴースト/ニューヨークの幻」やら「オールウェイズ」やらといったゴーストものも製作が可能だったという意義も含め9点進呈。