殺された仲間の復讐のため、対立する組へと殴り込みをかけ、刑務 .. >(続きを読む)
殺された仲間の復讐のため、対立する組へと殴り込みをかけ、刑務所に入れられた健さん。そこにはどういう訳か妙にバラエティに富んだ囚人仲間がいて、ってか、どういう訳かわざわざ由利徹がいたりして、完全に網走番外地シリーズの世界。鬼寅を思い起こさせるような訳アリっぽい初老の囚人(島田正吾)もいたりして。しかし一方、シャバの組の対立が刑務所内にも持ち込まれており、健さんのいる西房と、東房とが対立しております。この東房で顔を利かせているのが、池部良。とくればこれはもう、昭和残侠伝シリーズ。
こういうのを、1粒で2度おいしい、と言うのか、それとも、せっかくなんだから1粒ずつ分けて食べたほうがおいしいのになあ、と言うのか。で、両シリーズからの影響を隠すことなく前面に出しつつ、さらにそこに、高倉健×藤純子による、男と女のドラマがまぶされていて、こういう部分は後の降旗・高倉コンビの作品を先取りしている感もありますが、なにせ、もうお腹いっぱい。
ラスト、競輪場にいる敵の親分兄弟に対し健さんが殴り込みをかけますが、殺陣だけみれば、あまり過激さが無いというか、多少アッサリした印象は受けます。しかし、「雪が降り主題歌が流れる中を、ゆったりと死地に赴く」というドラマチックな演出ではなく、競輪場の中を足早に歩を進める健さんの姿をゲリラ撮影風に捉え、嵐の前の静けさを感じさせるのは、また一味違った味わいがあります。
終盤の殴り込みシーンに対応するように冒頭に配置される、雨の中の長回しによる決闘シーンも、見どころです。