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<ネタバレ>作中でイーストウッドはいつも何か小道具を持っている。葉巻、タバコ、シャンパングラス、そしてもちろんライフル…。手ぶらで登場する場面は、その後「何かを取り出して手にするため」に手ぶらであったに過ぎない(で、ハリウッドの面々がロケ地にやってくる場面では何を手にしていたかというと、ここだけ何故かサルだったのは、意表をついてて笑いました)。ラストで彼が“敗北感”を味わうところだけ、完全に手ぶらなんですね。大筋では、勝手な事ばかりしている映画監督の野心と挫折が描かれるのですが、単に主人公を憎まれ役(最後に敗北することが確約された人物)として描くのではなく、差別に対しては決然とNOをつきつける等、あくまで一本筋の通った人間として描くことで、物語とも言えないようなこの物語にきちんと流れをもたせ、ラストのカタストロフにしっかりとした“落差”を持たせることに成功しています。それにしてもいったい、この一見地味な物語が見事に映画となることを、イーストウッドの野性の勘が見抜くのか、それともイーストウッドはどんな題材であっても映画に化けさせてしまうのか。ラストの感動と余韻が、本作の最大の意外性だったりします。