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<ネタバレ>アレンの映画について書くときのいつものインサートのことから。
アレンは殆ど物のインサートを撮らない。
今回はイヤリングをプレゼントされるシーンが分かり易い。
大概の映画がイヤリングの寄りのインサートを撮る。
こんなイヤリングだ、という説明のショットだ。
アレンはこういったショット恐らく好んでいないであろう。
それはここで描きたいものはイヤリングをプレゼントするという行為だからだ。
インサートが入り行為そのものの流れに淀みが出来ることが嫌なのだ。
行為そのものの素敵さとイヤリング自体の素敵さは、
このシーンではほぼ無関係なのだから。
さて、そんなアレン映画の根底にある主題とはと考えると、
今を生きているということは決して幸せなことではない、
という正にこの映画がストレートに描いていることな気がする。
しかしそれでも今を生きるしかない
生きているからこそに見つけられる幸せ
それはたとえ雨の中でも自分の脚で歩いて見つけるしかない
現在への虚無感と過去への憧憬。
憧憬の中で生きようとも、それはいずれ虚無へと変貌を遂げる。
「過去は死んでないんだ、それは過去ですらないんだ」
今を生きることを選んだ男の最高の未練だ。
素晴らしい。