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久しぶりに見たら意外や、ザンパノがそんなにひどい男には見えない。体を張って生きるしかないだけの粗野で自己表現も愛情表現も下手な不器用な人間と言う感じだ。(昔はジェルソミーナがかわいそうという気持ちが強すぎたのかもしれない)綱渡り芸人がザンパノのことを「話しかけたいのに犬のように吠えることしかしらん」とその性質を代弁している。個人的にこの二人の会話のシーンから彼がジェルソミーナをザンパノの出てくる警察まで送っていくというくだりはこの作品で一番好きで印象的なところ。綱渡り芸人の死にショックを受け精神に異常をきたしたジェルソミーナの扱いに困りつつ何日も食事を作って与え、置き去りにするときもマントを着せかけお金やトランペットまで置いていっているし、最後にジェルソミーナの死を聞いて酒に酔い、浜辺で泣くのも置き去りにした彼女のことを気にしていたからだろう。ジェルソミーナ、ザンパノ、綱渡り芸人の3人は見る年代、時によってさまざまな感慨がある。危険な職業柄人生を達観しているような反面、お調子もので自らの死を招く綱渡り芸人、自己肯定感を持てなかったジェルソミーナはザンパノの役に立つことに自分の存在価値を見い出す。それゆえ特に誰がかわいそうとか不幸だったと単純には言い切れない。印象的なセリフの数々といいとても深くて味わい深い名作。J・マシーナはサイレント時代のチャップリンのように豊かな表情と体全体で複雑な心情を表現して圧巻だし、A・クインもザンパノという人物をまざまざと見せて素晴らしい。哀愁を帯びた主題曲もあっていつも涙がこぼれます。[良:2票]