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この頃のイタリア映画はドキュメンタリータッチのネオレアリズモが主流で、敗戦後のつめ痕を描いた数多くの名作を残しました。この作品もそのひとつで「靴みがき」「ひまわり」と並ぶ、デ・シーカの代表作にして名作中の名作です。物語りはといえば、貧困に喘ぐ中、やっと職を手に入れたものの自転車泥棒に遭い職を失ってしまう父アントーニオ。今度はこともあろうに、自分が自転車“泥棒”になってしまう。真面目な一市民が、まさに“魔”が差した瞬間を描いている。捕まえられ、息子ブルーノの目の前で群集にこづき廻される父。駆け寄り、父にしがみついて泣きじゃくるブルーノ。余りにも悲しく、身に詰まされるシーンでした。ところでこの映画、まったく救いようのないラストなのであろうか? このささいな出来事で良い教訓にもなったし、父と子の絆は終生深まるように見てとれる。この苦境を乗り越え、目覚ましい戦後復興という歴史的事実の中、逞しく生き抜くであろう父と子の姿が想像されるわけなんだが。