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本作は、やや大人向きでテーマはけっこう重いです。公式HPからも分かるように、自分を見失いかけている現代人に「人が生きているとはどういうことなのか」を問いかけている作品なんですね。一見奈落の底に突き落とされたトム・ハンクス演じる主人公チャックは、不幸の極みなのか、それとも…。それは誰にも分からない。まさに神のみぞ知るというわけです。「時は金なり」の仕事人間が、“時”とは無縁の無人島で、孤独と絶望と闘うという展開はまさに現代版クルーソー。絶望の極みに達し自殺未遂まで経験した彼が、どのような心的変化を経て人間のゆるぎない真理を発見したかが描かれています。それは救出後の、恋人も何もかも失いながらも「息をし続けるだけでよい」の言葉に表わされていると思う。名優トム・ハンクスの好演にはただただ脱帽。ゼメキス監督の丁寧で味わい深い演出もさすがだった。人間、孤独に耐え切れるものではない。バレーボールを友達に見立て、主人公の心情がわかる手法には納得でした。もちろん恋人ケリー(ヘレン・ハント)の写真は心の支えです。とくに鍵となる、最後まで開けなかった“天使の羽”。それは「届けるためにも生き抜くんだ」の希望の箱なんですね。答えはラストの“天使の女性”で明らかになる。やはり結びのラストが印象的だった。オープニングとは似ても似つかぬ、真理を発見した主人公がそこにある。その彼が十字路に立つ姿は、まさに裸一貫ゼロからの出発というわけです。