精神を病んだ男の遠い記憶のことであり、どこからどこまでが本当 .. >(続きを読む)
精神を病んだ男の遠い記憶のことであり、どこからどこまでが本当の出来事なのか分かりづらい。少年の母親は本当に殺されたのか? それでは誰に? 少なくとも母親は、この世にいないことだけは確かみたいだ。この辺り、受け手より推測するしかないのだろう。今作では、本来クローネンバーグ作品の売りとも言えるグチョグチョ感をビジュアルで見せようとしておらず、しかも共感しづらく感情移入しにくい主人公ときている。そういった意味ではエンターテイメント性は薄く、やや退屈に感じるかもしれません。しかし、陰気な主人公を演じたレイフ・ファインズを初め、二役を演じたミランダ・リチャードソン、ガブリエル・バーン、三人三様の確かな演技力に支えられ、作品自体の完成度は極めて高いと思いましたね。ジワジワとオゾマシさを増していく展開も秀逸で、鬼才クローネンバーグらしい独特の世界観が味わえるサイコ・スリラーの秀作です。