<ネタバレ>原作小説を読みましたので鑑賞しました。主人公の一人曽根俊也は .. >(続きを読む)
<ネタバレ>原作小説を読みましたので鑑賞しました。主人公の一人曽根俊也は、自分の声が犯罪に加担した罪の声だったことを突然知ることなります。全く記憶にない出来事に、良心の呵責とか罪の意識とか、そういうのとは違う「真実を知りたい欲望」「知らなければならない責任」「知りたくないという恐怖」を覚えます。その葛藤を星野源はしっかり演じていて。同じように利用された子供が二人いることを知り、寄り添いたい気持ちなった優しい男であることもすんなり理解できます。
原作は、忘れかけていた凶悪完全犯罪のルポルタージュとして大変興味深く、また過去の犯罪に利用された子供に着眼して創作された物語としても素晴らしいものでした。事件当時、脅迫電話に使われた例の子供の身を案ずるムーブメントはあったのでしょうか。
原作に対し映画はかなりスピーディーに取材が進み、さっさともう一人の被害者の聡一郎くんが登場して、ちょっと都合良過ぎるなと思ったのも束の間、この現在の聡一郎くんが素晴らしかった。つまり映画の方は事件のことよりも子供の物語を多く語る形になっていて、これはまた原作者が一番訴えたかったことだと思われ、その点は結果的に良かったと思う。
曽根さんはどんな人生だったんですか?と聡一郎に問われた時、答えられなかった曽根。曽根さんの今はあなた自身が掴んだものです、罪の意識を抱くべきはあなたではない、という阿久津。
望ちゃんの声が聴きたいと言って泣く母に、聞かせる声は犯罪に使われたテープの声。日本を震撼させた劇場型犯罪の裏に、一生を台無しにされた家族がいた、という仮定から作られた物語は、あまりにも切ないものでした。