<ネタバレ>冒頭でヨブ記が出てくるので、そこでテーマは明示される。あとは .. >(続きを読む)
<ネタバレ>冒頭でヨブ記が出てくるので、そこでテーマは明示される。あとはそれについていけるかどうかで評価が分かれるのでしょう(ちなみに私はキリスト者ではありません)。てっきりブラピ≒ヨブとして話が展開するのかと思ったのですが、息子が死んだり事業に失敗等々はするものの、本人はツライでしょうけどヨブの苦悩に比べればよくある話と言ってしまえばそれまでで、かと言って「主は与え、主は奪う」と回心するわけでもなく、「俺は献金したのに!」と神に対して恨み節。恩寵がカネで買えるわけがないでしょうよ。キリスト教的には近代合理主義的などうしようもない人間ですけど、彼なりに息子の事を思って教育はしたのでしょう。音楽家になれなかった自分の後悔があるクセに、子供には親のエゴを押し付けて同じ事を繰り返す。結果確執を生むのですが、世間一般的には普通の親で普通の人間だろうと思います。母は信仰心のある人でどうしてこの2人が結婚したのかがナゾですが、この両極端の親が息子に影響を与える。この辺はエディプスコンプレックスを抱えた少年物語という矮小な話に転換し、田舎のそれなりに裕福な家庭に育った少年期のよくあるノスタルジックな思い出話がダラダラと続く。ショーン・ペンに息子でもいれば「父の気持ちがわかった!」という家族の物語になるんでしょう。が、そこまでやるとファミリー作品になってしまい、宗教作品ではなくなってしまう。あえて淡々と描く事によって人間中心世界からの脱却を図ろうとしており、良くも悪くも観客の期待を裏切っていると思います。「世俗に生きるか、神に委ねるか」アジアでは中庸という考えがありますが、欧米人はこの問いに悩み続けるのかもしれません。大地や生命といった恵みが神から与えれ、神の計画の中で人間は生かされている。という壮大な話を平凡なイチ家族(の回想)を通して描くというのはちょっと乱暴というか飛躍もあるようにも感じますけど、映像的に強引に仕上げたという感じですね。ミクロとマクロの関連性の表現に中途半端というかギャップがあるのは否めませんが、どこかに連れて行かれそうな世界観というか不思議さはあります。鑑賞者に信仰心があればラストの最後の審判後に復活を遂げた家族との再会を思わせる映像展開に救いを感じるのかもしれませんが、そうでない人にとってはあまりにもちっぽけな己の人生に絶望し、逆にニヒリズムに陥ってしまうような気もします。