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<ネタバレ>所謂なりすまし系サスペンスであり、いつバレるんだろうという緊張感が持続する。スタンフォード監獄実験にもあるように立場や役割が人格を作るとはよく言われるが、本作は制服を手に入れた人間が権力を手に入れ、暴走していくというのがメインストーリーにはなっている。ただし、本作の中心テーマは権力や権威に対して人間はどのような態度を取るのか?といった社会的問題である。権力に対しては、積極的に加担したり、保身から仕方なく従ったり、異を唱えたり、様々な対応がある。それは学校や職場やさらには家庭でも言える事である。ちなみに、有名なアイヒマン実験(ミルグラム実験)によれば、人は権力に服従する事によって残忍になる事が明らかにされている。
本作では各人の対応が明確に描かれる事は少なく、多種多様ながら概して曖昧な形で描かれる。よって、鑑賞中はこの辺が少々わかりにくく、モヤモヤする事が多かった。しかしながら、権力に対する対応は個人の中でも一様ではなく、状況や場面によって変化するものであるし、そもそも曖昧でグレーなものである。そういったグレーさを描いたという点では非常にリアリティーのある作品に仕上がっているとも言える。他方、作品は中途半端なところで終わる印象も受ける。できれば主人公が処刑される最後までしっかりと描いて欲しかった気もするが、それを描かなかったのは主人公の生涯がテーマではないからだろう。
エンドロールでは主人公が現代によみがえり、我々に「独裁者」を突きつけてくる。これは過剰な演出とも言えるが、こうでもしないと歴史的出来事として片付けられてしまうのではないかという製作者の危機感故かもしれない。歴史的実話ながら現代的テーマとして重く響く作品である。