<ネタバレ>低予算の邦画サスペンスとしてはマイナーながら高レベルな作品。 .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>低予算の邦画サスペンスとしてはマイナーながら高レベルな作品。
その場の臨場感を出したり、どうなっていくか分からない不安感を演出するには、変に凝った事をするよりも、こうしたドキュメンタリーっぽい撮り方をするのが手っ取り早い、という好例。カメラの手ブレや不安定な主観視点が、何もしなくてもリアリティを醸し出してくれる。
些細なトラブルから、取り返しのつかない事態へ急転直下していく展開は、現実にもあり得そうなだけに、見る者にとっても感情移入しやすい。
マスコミ批判という点では、「破線のマリス」とも重なる部分があり、それ以外でテーマとしていまいち何が言いたいのか分からない欠点も似ているが、単純に不条理な運命の悪戯にただ翻弄される人間の姿を描いたサスペンスドラマとして見るなら、下手に理屈っぽくない方がいいかも知れない。
浅野忠信の演技力はなかなかのもの。「盗聴はするが、それ以外は決して常軌を逸した犯罪者ではない普通の青年」の追い詰められた演技がうまい。人を殺して狼狽たえ、恐慌を来たす様は鬼気迫るものがある。
ラストも見る者によって、色々と解釈が出来そうで、すっきりはしないものの終わり方としてはリアル。全体的にテンポも良く、時間も短めなので、いったいどうなるのかという興味が持続する。
ただストーリー自体にはミステリー的な謎解きが出てくる娯楽作品ではないので、本来は7点くらいが妥当だが、もっと評価されてもいいので8点献上。[良:1票]