前半は何だか重苦しい展開だが、主人公が身代金を懸賞金に摩り替 .. >(続きを読む)[良:1票]
前半は何だか重苦しい展開だが、主人公が身代金を懸賞金に摩り替えてから、俄然面白くなる。誘拐事件に於ける、息詰まる駆け引き、犯人と被害者双方の、極限の心理状態が、リアルかつスリリングに描かれている。 犯人の動機や背景には一切触れていない点が、少々物足りないという人もいるかもしれないが、余計な部分を排除し、ひたすらに事件の経過を追うことで、緊張感が維持、増幅しているのだろう。ここで犯人のエピソードなどを挿入するのは、恐らく蛇足になるだろう。ストーリー至上主義のミステリーマニアであれば恐らく、純粋な営利目的の誘拐ではなく、実は怨恨による犯行で、犯人と主人公との間に何らかの過去や確執があり云々・・・、といった展開を求めるのだろう。この点で評価が割れるのかもしれないが、個人的にはこのリアリティに◎。犯人が電話で、H・G・ウェルズの「タイムマシン」を引用し、動機を語る場面は、犯人の金持ちに対する憎悪と逆恨みが、これでもかというほど滲み出ていて印象的だった。 まさに、手に汗握る大人のサスペンス。 主人公のモデルはもちろん、ヴァージングループ総帥のリチャード・プライス。そういえば、元空軍パイロットといえば、メル・ギブソンは「エア・アメリカ」でパイロットの役をやっていた。この元パイロットで、リスクを恐れぬ実業家という設定がとても生きている。[良:1票]