果てしなく広がっていると思った自分の未来が突然絶たれて絶望す .. >(続きを読む)
果てしなく広がっていると思った自分の未来が突然絶たれて絶望することもあるだろう。重度の障害を持ってしまったら毎日家族の手を借りなければ出来ない排便の羞恥や屈辱に生きている事さえも疎ましく思うことの連続かも知れない。他人からは荷物のように扱われ無能呼ばわりされたりすることもあるだろう。悲しいことだが世の中には自らの意思で生も死も選択できない状態の人が相当数いる。訪ねてきた人と愛について語らうことも詩を詠むことも出来ない。それでも細胞は残された力を最大限使って生命だけは維持しようとするのに。聞けば動物の中で自ら命を絶つという行いをするのは人間だけらしい。最も「知」を持つはずの人間が動物としては最も愚かな行為に走ってしまう。死のうとする人にどれほどの苦しみがあったのか私には解らないが、強い逆境の中にあっても、或いはどれほど虐げられていようが撥ね退けてもまだ更に花を咲かせようとする程の強靭な生命力を持つのが人間本来の「知」の姿なのであり、そして死のうとする主人公の姿を切々と見せる事により逆に天寿を全うして迎える死こそ素晴らしい最期なのだと再確認させる事がこの作品の狙いだと信じたい。