手持ち風で揺れる画面は最初違和感があったけど、固定画面になる .. >(続きを読む)
手持ち風で揺れる画面は最初違和感があったけど、固定画面になる歌のシーンとのメリハリに慣れて次第にそれなりの効果を感じてくる。特に鉄橋でのダンスシーンがとても素晴らしい。移動する貨車とカメラの視点の細かな変化で表現する斬新な映像に目が釘付けになった。これらセルマの空想の中の出来事であるダンスシーンが終わるたびに現実はどんどん悪い方向へ進んでいく一連の展開方法はなかなかうまく作られている。セルマは裁判でなぜあれほどまで頑なに”沈黙”を守ったのだろうか。このときもっと事実を主張していれば金は自分のものだと認めさせられたし、殺人についても死刑は免れる事も可能であったであろうに。戦え!もっと生きろ!と思うけれど、無駄に抵抗せずに流れのままに受け入れるセルマの気持ちが不思議と良く判る。ラストの絞首刑に向かう所からはこのドキュメンタリーのような撮り方が見事に成功して背中がぞくぞくするほどのリアリティを感じ、観る者を主人公と同じ死の恐怖に陥れる悲劇の秀作。