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<ネタバレ>物語がレッドを通して語られるため、全編を通して、やや説明的過ぎるところもありますが、時間軸をうまく操作しながら、観客を離さないストーリーテリングの巧みさは秀逸です。重厚な人間ドラマをたっぷり堪能しました。ただ、「あの塀を見ろ。最初は憎み、しだいに慣れ、長い年月を経て頼るようになる。」と言う、囚人たちの心理を一発で表現してしまう見事な台詞に代表されるように、この映画の持つ重みは、映像的要素ではなく、むしろこういった印象的な「台詞」の数々によって支えられていることは間違いないでしょう。「希望」や「勇気」を讃えるために用意されたラストシーケンスも印象的です。とは言っても、このラストが即時に「爽快感」に繋がるかと言えば、個人的にはノーでした。この映画全編を通して僕が感じたのは、人間が自ら創り出した、法律、法制度に支えられた「社会」というものの曖昧さであり、不完全さです。無実の罪で刑務所に入れられる者、あるいは、罪を犯しながらも罰せられない者。こうした事例は腐るほどあるはず。また、アンディが看守に財産運用の手ほどきをしていく辺りは、法制度、あるいは人間社会の不完全さをあからさまに描写しています。理不尽が存在するのは、塀の中だけではなく、塀の外であっても同じことなのです。この映画でいう「希望」とは、あくまでも、この理不尽、あるいは不運に襲われた時に「楯」になるべくものなのです。これを身に付けていなければ、ブルックスのように死を選ばざるをえないということになるのでしょう。まさに「必死に生きるか、必死に死ぬか」であって、この不完全な「社会」の中では、何かに「希望」を持っていなければ生きていけないのが現実なのです。この映画でいう「希望」とは、生きるために自らが己を守る「楯」なのです。ですから、ここで描かれる「希望」に、時として、非常に利己主義的なものを感じてしまうのは必然なのでしょう。レッドは幸いにしてこの「希望」という「楯」を手に入れ、アンディのもとに向かいますが、この再会が決して明るい将来を約束するものではないことは明らかではないでしょうか。この再会のラストで僕が感じたのは、「爽快感」などでは決してなく、むしろ、この理不尽な社会にあって、たとえ利己主義であっても、どうあっても「必死に生きることを選べ」という悲痛な、そして生々しいメッセージなのです。[良:5票]