あまりにも怖くて、観終わったときは、体がぶるぶると震えたし、 .. >(続きを読む)
あまりにも怖くて、観終わったときは、体がぶるぶると震えたし、夜中は悪夢をみたし、この映画を観たショックで、トラウマを持ち、いまだに社会復帰ができない、ということは、もちろん冗談だけれども、率直に怖いか怖くないかと他人から聞かれれば、私は怖くない、といつも答えることにしている。昔の映画のわりには、こわい、という言い方もしたくない。昔と今を比較して、昔の映画に、意味不明のハンディなんて与えたくないのです。有名なあのシャワーの惨殺シーンは、お世辞でも怖いとは言えない。あれは、こわい、のではなくて、巧いと言うべきでしょう。 ぶっちゃけた話をさせていただくと、ヒッチコックの作品の「怖い」というのは、その知的さに裏打ちされたものであり、ゆえに、映画ファンは最大限の賛辞の意味をこめて、「こわい」と褒めるのである。ようするに、さほど笑えない喜劇に、「お腹が痛いくらいに笑いました」と賛辞をおくるチャップリン映画と共通したものがある。しかし、ヒッチコックがこの分野において、パイオニアであることは間違いないので、私はそのことについてはいつも敬意を惜しみません。しかし友達からすごく怖い映画を教えて、と聞かれたときに、ヒッチコックのサイコだ、とは口が裂けても言いません。