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<ネタバレ>この映画はとても切なかった。 「せつない」という言葉は英語には存在しない言葉だといいます。 日本語でもかなり微妙な言葉です。それは涙がぼろぼろ出るほど悲しいという感情ではなく、どこか甘さがあって、涙は数粒しか流れないような、なんとも表現しにくい感情です。その「せつない」という感情を充分に味わうことができるのが、この作品でした。 母親はあとわずかな命だという事は分かっていました。それで息子は「母さんの死ぬときまで、騙しきってやる」と考えます。 この「嘘」がこの映画の最高の見所になります。 友人と2人でニュースを作ってまで、母親を騙そうとする姿は、とても笑えるのだけど、切なさが漂ってくる笑いがあるのです(泣) 最後に母親がその嘘に気がついたにもかかわらず、知らんふりをして言った「素晴らしいわ」という言葉のなんと素晴らしいことでしょうか? それを息子は、嘘のニュースを見て、母親が信じていた共産主義が勝利したことに喜んでいるのだと思って得意顔になっていました。 しかし実は、息子のついた一世一代の嘘に対して「素晴らしいわ」と言ったのだと思うともう本当に切なくなってきます。 この映画に登場するすべての人間のつく嘘の切なさに強く共感しました。 ちなみにこの母親の設定は、作家三浦綾子の自伝小説「道ありき」と、とても似ていました。