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<ネタバレ>レビューを書くにあたって一つだけ、自分が初めて劇場で見たジブリ映画がこれだった、というごく個人的な「おもひで」を書いておきたいと思います(^^;)。
主人公である27歳のタエコは、親元を離れて就職を経験するなど、一応は自分自身の人生を自分だけの手で所有する事になり、その結果、自分自身の気持ちと自然に向き合うようになったのだと、僕には見えました。その結果、彼女の胸には数々の「おもひで」が去来するようになったのだと思います。
その彼女の「おもひで」の数々が、今回見返してみて、まるで自分自身のかつての「おもひで」に接しているかのように親しく感じられたのです・・・と言うよりも、自分自身の気持ちに素直に向き合うようになった27歳のタエコが、彼女にとって最も親しい、自分にとっての中心となる大事な感情が秘められた「おもひで」を一つ一つたどって行くそのプロセスが、僕にとってとても素直に響いた、ということかもしれません。
子どもらしい些細な感情を基調に淡い色調で描かれているので非常にマイルドな印象を受けますが、小学校時代のタエコの「おもひで」で描かれているのは(もちろん観ていて微笑ましいものも含まれるものの)、いずれも自分自身の本質的な「疑問」や「感情」を押し殺されるような、実はタエコにとってとても過酷な経験ばかりです(例えばタエコはその後、「分数の割り算」に対する本質的な疑問を解く事はできませんでしたし、劇団の子役になることも叶わず、何より転校生に対しての「後ろめたさ」を長い間引きずらなければなりませんでした)。
その数々の「おもひで」に接して、27歳のタエコはある時は、そこから自分自身の大事な気持ちを(つまり、疑問や喜びなど、様々なことに対して自然に、素直に心を動かしていた自分自身のありようを)振り返り、またある時には「トラウマ」とも言える深刻な後ろめたさと真剣に向き合うのですが、そんな彼女の姿が、僕にとってとても力づけられるように感じられたのです。ラストシーンで初めて、27歳のタエコと小5のタエコが(恐らく27歳のタエコは気づいていないままで)「出会い」を経験しますが、少し大げさな言い方をすると、僕はこのシーンで27歳のタエコがようやく、数々の「モヤモヤ」を抱えた小5のタエコ(つまりかつての自分自身)と「和解」をすることができたように見えて、とても心温まる思いがしました。[良:1票]