<ネタバレ>法廷ドラマではなく、弁護士の父の苦悩を見ながら育った娘から見 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>法廷ドラマではなく、弁護士の父の苦悩を見ながら育った娘から見た、回想形式の人間ドラマの秀作です。最近の人種差別の裁判モノだと「目をつぶってください、それは白人でした」みたいな、証拠で解決できない最後の部分は人の心に訴えるというパターンが王道ですが、この作品は双方からの証言を元に展開する必要最小限の法廷ドラマなので余計に見ごたえがありました。子供が父親を尊敬する目、父親がちゃんと行動にして指針を見せる様子、これこそが親子の理想の形であり、フィンチ弁護士が理想のヒーロー像の第1位になった所以だと思います。「ローマの休日」がきっかけで映画の魅力にとりつかれた私にとって、グレゴリー・ペックの存在は色々な意味でヒーロー。彼の派手さはないけれど、しんみり心に伝わってくるこのヒューマンドラマでの演技で念願のオスカーを受賞した事は実に彼らしいなと思いました。また子供二人の見事な演技もこの作品の魅力に華を添えていると思います。黒人擁護で冷たい視線を送っていた周辺の人々すら、有罪の判決を聞いた瞬間に戸惑い、心揺れる様子が印象的でした。ブーはフィンチジュニアの命の恩人でしたが、フィンチもまた黒人の皆さんの心の中の恩人になれたのだと思います。