多くの登場人物の中で副支配人としてプロの義務を果たしていた新 .. >(続きを読む)
多くの登場人物の中で副支配人としてプロの義務を果たしていた新藤だからこそ、自分を偽ったことに落胆する彼にかけられた「自分らしくて、何故いけないの?」という言葉が重く感られる。「自分らしく生きる」こととは「義務を果たした上に、自分の信条に正直に生きる」ことであり、「身勝手に生きる」ことや「無理をしないで生きる」こととは違う。生きる舞台が表でも裏方でも、自分らしく生きるためには、政治家であれホテルマンであれミュージシャンであれ、自分に出来る義務を果たした上に、シッカリとした目標が要る。政治家としての義務を果たせずに逃げ出した武藤田や、夫婦としての義務をほったらかして不倫相手と結婚する心づもりの坂東には共感出来ないし、それをもっともらしく後押ししている竹本ハナにも納得出来なかった。‥‥‥しかしそれでも人の生き方なんて十人十色。政治の世界に生きる理由を見つけだした武藤田は、これから政治家としての義務を果たしていくだろうし、ミュージシャンを目指す只野は、その目標のためにベルボーイとしての義務を果たしていくだろう。シッカリとした目標=生きる理由さえあれば、果たさなければいけない義務はそこから生まれてくるもの。そう考えれば、新しい年を生きる理由と共に迎えた彼ら全てを肯定し、幸せを祈る気持ちも生まれてくる。大晦日、誰もが来年こそはと自らの生き方を思う格好の機会「年の瀬」に、イチモツを抱えた多種多様な登場人物が絡み合う実に楽しい映画だった。‥‥‥これだけの強烈なキャラクターを揃えながら、複雑な人間関係をよくも見事にまとめあげたと思う。ラストシーン、You演じる桜チェリーの歌はコミカルなリズムにあの独特の声質がマッチしており、いっそ彼女の持ち歌にしてもいい気がする。篠原涼子演じるコールガールのブリッ子を心の底で可愛いと思ってしまった自分にオジサンを感じ、最後の歌声に自然に身体が揺れ、自分もホテルの宿泊人になっていたような、観た後はとても爽やかで楽しい気分になった。