主人公の過去の経歴も決して許されるものではなく、殺された保安 .. >(続きを読む)
主人公の過去の経歴も決して許されるものではなく、殺された保安官の行為も治安を守るためとは言え許されるものではなく、クソしているところを3発も撃ち込んで殺した青年の行為も許されるものではない、「許されざる者」だらけの登場人物。しかし、それら全てが奇妙に存在を肯定されているのが分かる。ミスティック・リバーもそうだったが、イーストウッドの作品は道徳的な視点や評価を超越したところにある。シンプルな物語が続いた後に、一瞬で終わりを告げるクライマックスはまるで黒澤明監督の「用心棒」や西部劇の「シェーン」のようだ。人殺しを非道な行為と否定する主人公の台詞はわざとらしいほど説教臭く説得力もないのだが、主人公自身も自分を「許されざる者」であるところを自覚していて、全然嫌味に聞こえないところがいい。麦畑や夕日の小屋など、コントラストを活かした映像も美しかったし、雨降るラストシーン、微かな光差す暗闇の彼方へ去ってゆく主人公の後ろ姿が印象的だった。