自分がこれまで見てきた映画の中では最高傑作の一つです。暴力、 .. >(続きを読む)
自分がこれまで見てきた映画の中では最高傑作の一つです。暴力、セックス、ホラー、お涙頂戴的感動などを非日常的な程に過剰に描いてインパクトを持たせるという手法が映画にはあると思うのですが、この映画では人間の持つ差別心という暗い欲動を鮮烈に描いています。それだけドロドロした差別が当時のアメリカ南部には実際根強く残っていたのかも知れませんが(上映当時のほんの数十年前の出来事だったというのは衝撃的です)、ここまでストレートに描ききる作品はそう多くはありません。当時はミシシッピー州民から描写が酷すぎると抗議を受けたそうです(南北戦争で負け人種差別のスティグマを負ったアメリカ南部は、太平洋戦争に負けて数々の戦争犯罪を糾弾される日本と色々な点で似通っています)。暴力、セックス等の過剰は昨今のアメリカ映画では珍しくも何ともありません。しかし、こうした社会問題、道徳観を深く抉るという意味での「過剰」な作品は希有です。暴力は過剰であっても安直な勧善懲悪プロットであったり、単なるキチ*イの話で済ましてしまい、真の問題には直面しない作品が殆どだからです。アメリカ南部における差別の問題が単純な善悪二元論では汲み尽くされないことは、ジーン・ハックマン演じる南部出身FBI捜査官の葛藤でうまく表されています。その一方で、ウィリアム・デフォー演じる北部出身のエリート捜査官が、おぞましい差別はびこるミシシッピー州へガムシャラに体ごとぶつかっていく姿が、この映画を単なるこ難しい社会批評映画ではない、楽しめるエンターテイメントに仕上げています。当時、司法長官ロバート・ケネディ指揮の元、全米の人種差別問題に全面戦争を展開した理想に燃える若きFBIエリート捜査官の奮闘は、見ているこちらも熱くなってきます。そんな彼が力で押していくだけでは駄目な事に気付き、ハックマンに助けを求める所から話が急展開していきます。