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<ネタバレ>自分の理想通りに動かせるCGの女優(シモーヌ)を使って作った映画で、存在しないはずのシモーヌが一躍スターの座に持ち上げられてしまい、大衆の熱狂ぶりに困惑する映画監督とその家族の物語。シモーヌに熱狂する大衆と、その存在をひたすら隠そうとする監督のやり取りをコメディタッチで描いているが、実はこの映画はアンドリュー・ニコル監督自身が言っているように「現実と虚構の境界線の曖昧さ」というシリアスなテーマを扱っている。映像技術の発達で、TV、ゲーム、パソコンなど日常生活のありとあらゆる場面でデジタルでバーチャルな映像が氾濫している。そんな中それをまるで作られた「ニセモノ」を「本物」と勘違いし、「本物」と「ニセモノ」の境界線が薄れてきているのが今の時代だ。実際には存在しないシモーヌを必死で追い求める大衆の姿は非常に滑稽である。しかし、一歩下がってみてみれば、この映画の中の大衆は、TVやスクリーンに映し出されるアイドルやスターに熱を上げている日常生活における我々のそれと大差が無いことに気付かされる。憧れているアイドルやスターに会ったことがある、もしくは話した経験のある人はどれほどいるのだろうか?ほとんどの場合、TVやスクリーンの中、もしくは雑誌の中で目にしているだけである。バーチャルなもの(TV、スクリーン、雑誌)の中だけで目にする彼ら(彼女ら)は等身大の彼ら(彼女ら)なのだろうか?我々がアイドル、スターと呼ばれる人々に対して持っているものは「イメージ」であり、メディアによって偶像化されたものであり、自分たち自身で勝手に作り上げたものではないか?つまり、シモーヌに熱狂する大衆とはまさに我々そのものなのである。この映画は「本物」の感覚が薄れ、「本物より本物らしく見えるニセモノ」に魅了されてしまう現代人を皮肉りつつも、それに対して警鐘を発しているのである。コメディとして見て、面白くないと言うのは当然と言えば当然だろう。[良:3票]