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<ネタバレ>『ロッキー』と『ロッキー2』はボクシング映画と言うより人生映画だがこの『3』でようやくボクシングそのものを描く映画になる。それにしてもオープニング中に時間の経過と現状を一気に紹介する見せ方が上手い。凄いのは初めてチャンピオンになった『2』から惜しげもなく引退間近まで時間を進めていること。シリーズ1~3作目まではその都度これで終わらせるつもりで作っているようだ。最初から続編ありきで始める昨今の映画はちょっと見習ってほしい。
『3』でのロッキーはゴロつき時代とは全く異なる堂々たるチャンピオンぶりでスーツも似合っている。体も脇腹の腹斜筋が浮き出た見事なもので最強のチャンピオンの設定に説得力を与えている。そしてミッキーとの絆が前半で語り尽くされる。ミッキーが名伯楽イメージなのはこの『3』あってのことだ。
クラバー・ラングはひたすら悪意を撒き散らす「悪役」だが、あのむやみな闘志はボクシングでは必ずしも悪とは言えない。そしてロッキーはラングが持っている「虎の目」を取り戻すために苦闘する。その折り返し点になるのはエイドリアンとの言い争い。『2』の時のように格好つけて一言で済ませず泥臭くいくのが良い。泥臭いと言えば80年代始めのカリフォルニアはシリコンバレーを擁する今とは隔世の感があるのが興味深い。そしてたぶん現地の本物のボクサーなのだろう、ジムにいる男たちが獣のような目をしている。
ストーリーは挫折から闘志を取り戻して試合に向かう、というもはや黄金パターンだが『3』ではトレーニングでアゲていく描写にカタルシスがある。まさに友情・努力・勝利でその過程の「特訓」シーンにあのテーマが使われる。そして試合では『2』でも使われた音楽がより効果的な使われ方をしていてさらにアガる。そしてクライマックス後の締め方も小粋。ラストシーンがダラダラ長い昨今の映画はちょっと見習(略)。
この映画は全体として人物の心情をきちんと映像で表現するので観ていてわかりやすい。そりゃ文芸的、芸術的な価値では初代に及ばないだろうが、映画表現として最高の部類だろう。少なくともこの1作で見ればシルベスター・スタローンは役者として超一流、アクション俳優として超々一流、監督としては神だ。10点満点中13点を進呈。[良:1票]