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<ネタバレ>どんな映画か全く分からずに、それも映画館で観る、これが意外に面白かった。安心のジブリ印だし。劇中で普通ならジャンプスケアがありそうな場面でビクビクしてしまったが、ジブリなので当然そんな心配はいらない。
そしてジブリが得意な日常の描写、詳細なディテール(←重複表現)がしつこーーーーく描かれる。何の話か分からないからそのディテールに目が行ってしまう。おそらくこの映画は最初から情報を出さないプロモーションで行く企画で作られたのだろう。もしかしたらディテール表現をこれでもかと詰め込むために作られた映画なのかもしれない。
キャラクターはどれも練られていて、声優陣の演技も秀逸。キムタクもハウルと同じくジブリでは良い演技で、実はあれが素の実力だとしたら実にもったいない。
その「キャラクター」が、良く出来てはいるのだが既視感がある。生真面目で熱い少年、きっぷのいい姐さん、万能の少女、憎めないセコいヤツ、自分ではなんにもできない普通の中年男女、自らの限界を知る孤高の老人、そして異生物のような老婆・・・。いわば人間を性別と年齢で切り分けたスターシステム。昔からそうだが宮崎駿は80歳超えてまだそういう世界の見え方なのか?
世間的に評価が高いが自分はすごく苦手な、あのヌトヌトとした食べ物描写、そのぶしゃぶしゃした喰い方、そういう質感も含めて宮崎駿の集大成的作品ではあるんだろうね。大風呂敷を思わせぶりに広げたあげくクルっと丸めてはい畳みましたーという展開も嫌いじゃない。主人公の空虚さも品があって好感が持てる。君たちはどう生きるか、俺はこう生きたぞという自作戒名発表的作品なのかも。
全体的には好きだしストレートなエンタメ作品として人にもおすすめできるが、音楽だけはいただけなかった。思わせぶりなミニマムな楽曲。これがどう展開するのかと思ったら同じものが何度も、けっこうな頻度でかかる。久石譲がお疲れなら別の人に頼んだら良かったのでは?エンドロールの米津玄師の曲も本編との繋がりがピンと来ないし、手書き風フォントにするのは良いとしてバックを青にする意味がわからない。本編が詰め込み過ぎなのにラストのラストが放り投げというのはいかがなものか。