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<ネタバレ>もし『ロッキー』が初代で終わっていたら映画単体としてはさらに高い評価を受けていたかもしれない。しかしアポロには周囲の反対を押し切ってでも再戦する必要があった。ロッキーは転職がうまく行かない上に妻が過労で倒れ子供も出来る。そんな登場人物たちと同じく映画の制作者側もおそらく「再戦」に追い込まれた。どうしてもこの続編で前作の決着を付けなければならない。
最初から本気になったアポロは本当に強いチャンピオンに見えて恐い。しかしながら映画全体は前作同様ボクシングより人生に焦点が当てられる。一発屋の悲哀、「普通の暮らし」の厳しさ。そして闘志を失ったロッキーが再起へ折り返す一点、その一点はエイドリアンの一言だけ。そこが劇的ではあるのだが、いかにも劇的にしましたという作為が垣間見えるのが残念。そのせいでディテールが堅牢なこの作品が全体の構成としてもろく感じられてしまう。(そしてもうひとつ、ミッキーのオーソドックスチェンジ作戦、あれ意味あった?)
たぶんだが一般的に「ロッキー」シリーズに抱くイメージが全部揃ってるのは実はこの『2』だよね。みんなが知ってるロッキーはこの『2』のロッキー。貧しい境遇、不器用で打たれ強いハードパンチャー、厳しくも熱い頑固じじいトレーナー、乗り越えるべき強いチャンピオン、純愛、そしてダブルノックアウト。『ロッキー2』は最高の映画でも最高のボクシング映画でも最高のロッキー映画でもないかもしれないが、あらゆる映画や漫画その他の文化に最も大きな影響を与えているような気がする。