<ネタバレ>山田洋次監督が「釣りバカ日誌」シリーズ以外で久しぶりに脚本の .. >(続きを読む)
<ネタバレ>山田洋次監督が「釣りバカ日誌」シリーズ以外で久しぶりに脚本のみを手掛けた佐々部清監督による戦争映画。ハデな戦闘シーンを描かずに主人公以下登場人物たちのドラマを描いているのはいかにもホームドラマが主の松竹らしいし、回天という非人道的な兵器を後世に伝えたいという作り手の気持ちはわざわざ主人公がセリフで言わなくてもよく分かる。「釣りバカ日誌」シリーズは末期は脚本の適当さが目立っていたが、さすがに本作はそこまでの適当さはなく、脚本も演出も真面目で良心的。しかし、回天の存在を後世に伝えることに注力しすぎたのか、ほかのドラマ部分は薄いし、なにより主人公である並木(市川海老蔵)の野球への思い入れの強さがほとんど伝わってこないのが良くない。見る前はもっと野球を中心にストーリーが展開する映画だと思っていただけにここが薄っぺらいのは本当に残念。また先に書いた回天の非人道性も出撃時に故障(実際に多かったのかもしれないが。)が頻発するというありさまではかえって間抜けに見えてしまい、回天の恐ろしさというものもあまり伝わってこないのは映画を製作した目的がそもそもじゅうぶんに果たされているとは言えない気がする。出演者が現代的にしか見えない若者ばかりだったり、「この戦争は負ける」という並木のセリフは現代の戦争映画なので仕方ないと思うものの、主演の海老蔵の演技はやる気があるのかと疑いたくなるほど下手(「一命」のほうがまだ演技は気にならなかった。)で、ドラマが薄っぺらいうえにこれでは並木に感情移入することができない。海老蔵だけではなく「嫌われ松子の一生」や「十三人の刺客」ではさほど気にならなかった伊勢谷友介の演技もなにか微妙に感じた。それと、物語の語り手が途中からいきなり変わるのは違和感を感じる。映画としてもなかなか微妙な印象だが、テーマ自体は決して悪くはなく、存在意義もある映画だとは思うのでまあそれを考慮して5点。でも、山田監督が自ら手掛けていたらどんな映画になっていただろうという思いはある。本作と同じく回天を扱った映画である松林宗恵監督の「人間魚雷回天」をずっと見たいと思っているのだが、なかなか機会に恵まれないのが残念。いつか絶対に見てみたい。